耐火・耐熱電線とは
人の密集するビル火災で、大勢の人命が奪われる事故が相次いで発生したことから、消防設備の整備、特に火災時の非常用電源の確保が重要視され、昭和45年に弱電回路用の耐熱電線の基準、昭和46年に強電回路用の耐火電線の基準が消防庁で定められました。その後、幾度かの基準改正を経て現在に至っています。これらの電線は、一般の電線と比べ特殊な耐火層(耐火電線)や耐熱層(耐熱電線)などを設けているため、火災時でも絶縁性能を保ち、一定時間の通電を可能としているもので、消防法および建築基準法で定める各種非常用設備(非常用エレベーター、屋内消火栓設備、排煙設備など)の配線に使用されます。 耐火・耐熱電線以外に耐熱光ファイバケーブル、耐熱形漏えい同軸ケーブル等および警報用ケーブルがあります。
耐火・耐熱電線に含まれる種類
耐火・耐熱電線には、以下のような種類のものが含まれています。
- 低圧耐火ケーブル
- 高圧耐火ケーブル
- 低圧耐火バスダクト
- 小勢力回路用耐熱電線
- 耐熱光ファイバケーブル
- 耐熱形漏えい同軸ケーブル等
- 高難燃ノンハロゲン低圧耐火ケーブル
- 高難燃ノンハロゲン高圧耐火ケーブル
- 高圧耐火バスダクト
- 高難燃ノンハロゲン耐熱電線
- 警報用ポリエチレン絶縁ケーブル
耐火・耐熱電線の表面表示例
品名 | 種類 | 電線表面の表示 |
---|---|---|
低圧耐火ケーブル | 露出用 | トウロクニンテイキカンJCT FP XXXXX |
シテイニンテイキカンJCMA FP XXXXX | ||
JCMA タイカ XXXXX | ||
電線管用 | トウロクニンテイキカンJCT FP-C XXXXX | |
シテイニンテイキカンJCMA FP-C XXXXX | ||
JCMA タイカデンセンカン XXXXX | ||
低圧耐火ケーブル (高難燃ノンハロゲン型) |
露出用 | トウロクニンテイキカンJCT FP(NH) XXXXX |
シテイニンテイキカンJCMA FP(NH) XXXXX | ||
JCMA タイカ(NH) XXXXX | ||
電線管用 | トウロクニンテイキカンJCT FP-C(NH) XXXXX | |
シテイニンテイキカンJCMA FP-C(NH) XXXXX | ||
JCMA タイカデンセン(NH) XXXXX | ||
高圧耐火ケーブル | 露出用 | トウロクニンテイキカンJCT FP XXXXX |
シテイニンテイキカンJCMA FP XXXXX | ||
JCMA タイカ XXXXX | ||
電線管用 | トウロクニンテイキカンJCT FP-C XXXXX | |
シテイニンテイキカンJCMA FP-C XXXXX | ||
JCMA タイカデンセンカン XXXXX | ||
高圧耐火ケーブル (高難燃ノンハロゲン型) |
露出用 | トウロクニンテイキカンJCT FP(NH) XXXXX |
シテイニンテイキカンJCMA FP(NH) XXXXX | ||
JCMA タイカ(NH) XXXXX | ||
電線管用 | トウロクニンテイキカンJCT FP-C(NH) XXXXX | |
シテイニンテイキカンJCMA FP-C(NH) XXXXX | ||
JCMA タイカデンセンカン(NH) XXXXX | ||
小勢力回路用耐熱電線 | ― | トウロクニンテイキカンJCT HP XXXXX |
シテイニンテイキカンJCMA HP XXXXX | ||
JCMA タイネツ XXXXX | ||
小勢力回路用耐熱電線 (高難燃ノンハロゲン型) |
― | トウロクニンテイキカンJCT HP(NH) XXXXX |
シテイニンテイキカンJCMA HP(NH) XXXXX | ||
JCMA タイネツ(NH) XXXXX | ||
耐熱光ファイバーケーブル | ― | JCT タイネツヒカリ XXXXX |
JCMA タイネツヒカリ XXXXX | ||
耐熱形漏えい 同軸ケーブル等 |
― | JCT タイネツドウジク XXXXX |
JCMA タイネツドウジク XXXXX | ||
警報用ポリエチレン 絶縁ケーブル |
一般用 | JCT ケイホウ XXXXX |
JCMA ケイホウ XXXXX | ||
ニンテイケイホウ XXXXX | ||
屋内専用 | JCT ケイホウオクナイ XXXXX | |
JCMA ケイホウオクナイ XXXXX | ||
ニンテイケイホウオクナイ XXXXX |
注1…電線表面表示は上表の内容のいずれかが表示されます。
上段:登録認定機関一般社団法人電線総合技術センターにより認定または評定されたもの。
中段:指定認定機関社団法人日本電線工業会(耐火・耐熱電線認定業務委員会により)認定または評定されたもの。
下段:社団法人日本電線工業会により自主認定 (評定)されたもの
注2…XXXXXの部分は(電気用品のマーク)、製造社名または商標、製造年、品名などが表示されます。
注3…電線管用耐火ケーブル(FP-C)は露出配線にも使用することができます。
上段:登録認定機関一般社団法人電線総合技術センターにより認定または評定されたもの。
中段:指定認定機関社団法人日本電線工業会(耐火・耐熱電線認定業務委員会により)認定または評定されたもの。
下段:社団法人日本電線工業会により自主認定 (評定)されたもの
注2…XXXXXの部分は(電気用品のマーク)、製造社名または商標、製造年、品名などが表示されます。
注3…電線管用耐火ケーブル(FP-C)は露出配線にも使用することができます。
加熱方法
耐火電線の加熱試験
JIS A 1304(建築構造部分の耐火試験方法)に定める加熱温度(標準加熱曲線B)に準じて30分間で840℃に到達するように加熱する。
【耐火電線の露出試験用試験体】
【耐火電線の電線管試験用試験体】
【耐火電線の電線管試験のイメージ】
耐熱電線の加熱試験
JIS A 1304(建築構造部分の耐火試験方法)に定める加熱温度(標準加熱曲線B)の1/2に準じて15分間で380℃に到達するように加熱する。
小型加熱炉
小型加熱炉は耐火・耐熱電線の耐火及び耐熱性能を評価するために考案された試験炉で、消防庁告示第10号及び11号の耐火試験及び耐熱試験に特化した我が国固有の試験装置です。炉内には炉内温度制御用及び試料表面温度モニタ用の2本の熱電対が設置されており、炉内温度は炉内温度制御用熱電対の信号を元にプログラム調節計がバーナへのガス流量を調節することによって制御されます。このプログラム調節計には様々な加熱パターンを設定することができますが、温度制御はバーナガス流量の調節のみによることから、比較的緩やかな温度上昇パターンの場合は精度のよい制御が行えますが、急激な温度変化及び温度を降下させるようなパターン等の温度制御には適していません。耐火・耐熱電線試験の加熱パターンはJIS A 1304(建築構造部分の耐火試験方法)の標準加熱曲線Bによる比較的緩やかな温度上昇パターンであることから、小型加熱炉によって比較的精度よく炉内を加熱することができます。
耐火・耐熱試験の概要(小型加熱炉)
耐火試験(低圧耐火ケーブル) | 耐熱試験 | |
---|---|---|
ケーブルサイズ | 導体サイズ | ― |
~1000mm2未満(単心) ~325mm2未満(多心) これら以上のケーブルは大型加熱炉で試験を実施 |
||
加熱曲線 | JIS A1304の標準加熱曲線B(30分で840℃まで加熱) | JIS A1304の標準加熱曲線Bの1/2の温度(15分で380℃まで加熱) |
加熱時間 | 30分 | 15分 |
試験体 | 露出試験用 (露出試験では、1.3mの試料重量の2倍の荷重を試験体にかける) 電線管試験用 (長さ40cmの金属製電線管内に耐火電線を挿入する) |
露出試験用 試料外径によって直線状態もしくはU字またはS字に屈曲した状態で試験を実施する (1.3mの試料重量の2倍の荷重を試験体にかける) |
絶縁抵抗(加熱前) | 50MΩ以上 | 50MΩ以上 |
絶縁抵抗(加熱後) | 0.4MΩ以上 | 0.1MΩ以上 |
絶縁耐力(加熱前及び加熱後) | 1500V,1分間 | ― |
絶縁耐力(加熱中) | 600V,30分間 | 250V |
接続部の標準工法
耐火・耐熱電線接続部標準工法とは、これまで、消防予第123号*「耐火電線等に係る接続工法の取り扱いについて」(平成10年7月31日 消防庁予防課長)にて通知されていた、耐火電線接続部標準工法及び耐熱電線接続部標準工法であり、 耐火電線及び耐熱電線の接続工法のうち、耐火電線の基準(平成9年消防庁告示第10号)及び耐熱電線の基準(平成9年消防庁告示第11号)に規定する所要の耐火性能または耐熱性能を有するものとして取り扱うことができるものです。現在は、日本電線工業会規格JCS 4506「低圧耐火ケーブル」の附属書B「低圧耐火ケーブル接続部標準工法(規定)」およびJCS 3501「小勢力回路用耐熱電線」の附属書B「小勢力回路用耐熱電線接続部標準工法(規定)」において、接続部の標準工法が定められています。
*同通知は既に廃止されています。
*同通知は既に廃止されています。